蚊帳織りへのこだわり
奈良の伝統産業として栄えていた蚊帳製造。昭和30年代までは、たくさんの蚊帳製造の商店がならまちに軒を連ねていました。ところが生活様式の変化にともなって家庭から蚊帳が姿を消すようになり、蚊帳産業は一気に衰退。今では、ここ奈良の地で蚊帳生地染織の一貫生産ができる最後の会社となっています。
昭和5年、祖父が創業した蚊帳製造業の丸山商店が、現在の丸山繊維産業の始まり。昭和35年には織りから染めまで、蚊帳を一貫生産できる工場を設立しました。ところが昭和40年頃から蚊帳の需要が低下。父の時代には、蚊帳織りの技術を活かした農業資材(寒冷紗)の生産へと事業を転換。そして今、蚊帳織り技術を活かしたオリジナルブランドを立ち上げ、蚊帳織りの新しい可能性を開拓しています。
私が子どもの頃、奈良の名産品といえば、墨、筆、蚊帳が挙げられていました。
しかし今、蚊帳はすっかり姿を消し、忘れ去られようとしています。
3代にわたって受け継いできた蚊帳織りが、このまま消えていくのはあまりにも寂しいことです。
かつてこの地に栄えた蚊帳産業のことを、多くの人に知ってもらいたい。
その想いを胸に、新しい分野へとつながる可能性を探る毎日です。
蚊帳織りの魅力を次の時代に伝えることが、一貫生産を守り続けてきた私たちの使命だと考えています。